18歳が大学のリサイクルコーナー(学生や先生が、まだ使える不用品を出せるスペース)からCDを持ち帰ってくるようになったのは先週のことだった。ジャケットがかっこいい、CDで音楽を聴いてみたい、と彼は言う。最近は古着だけでなく、その年代の音楽やアートにも興味が出てきたようで、彼の部屋にはレコード、雑誌、ポスターなどの古き良きアイテムが少しずつ増えている。けれども、わが家にはラジカセやレコードプレイヤーがない。CDを聴けるパソコンもない。
きのう、だらだらと汗を流しながら帰宅した彼の手には、でっかいCDラジカセが抱えられていた。正しくはカセットデッキが2つ付いている、CDダブルラジカセが。驚きのあまり言葉を失うわたしを見て、「いやあ、リサイクルコーナーにこれが出てて、持って帰らないわけないはいかないやつだと思ってさ〜でもすんげえ重い!」と言ってカラカラ笑った。彼の毎日はニュースが絶えない。
コードをつなぐと、無事に赤いランプが点灯した。電源は入った。果たして音が鳴るかどうか。おそるおそるEJECTボタンを押し、CDを入れ、PLAYボタンを押す。ひと呼吸分の間をおいて、「かなしみのはてーに」と歌う宮本さんの声が流れてきた。「おおー!」「すごい!聴けた!」と歓喜する18歳。そのとなりで、思わず声を上げてしまうくらい興奮し、感動するわたし。自分でもよくわからない、不思議な感覚だった。かつては当たり前だったこと。何度も何度も体験したことに対して、まるで初めてのようなみずみずしい喜びを感じるなんて。
夜になって、ふと思った。強烈な感情がはじけると小さな粒になって、まわりへ伝わっていくのかもしれない。あのとき、わたしはきっと、彼のきらきらした感情の粒をめいっぱいに浴びて、同じような気持ちになったんじゃないか。もしそうだとしたら、とてもおもしろい体験だったなぁと思う。
