注文を受けていた開襟シャツをすべて作り終えた。最後に残ったのは、すぐにほろほろとほつれてきて縫うのが大変な、真っ白なダブルガーゼ。気合いを入れて作りはじめたはいいけれど、うっかりソファにかけておいた身ごろのうえにヨルくんが陣取ってしまったり、表と裏をまちがえて解かなければならなかったり、なかなか思いどおりすすまなくて、途中何度も「わたしは(裁縫を)楽しくてやっているのだから、いらいらするのはもったいない」と唱えながら深呼吸をしたりした。
楽しいことをやっていたって、心が乱れるときはある。けれども、何かを作るとき、たとえばごはんとか、服とか、編み物とか、棚とか、そういうものには作る人の感情とかそのときの空気みたいなものがどうしても伝わってしまう気がするから、少しがんばってでも切り替えるようにしている。それが叶わないときは、思い切って手を止める。
幾度かの中断と休憩を経て、ようやく完成したときの喜びと達成感といったらもう!今回は襟の大きさ、丈と袖の長さをアレンジしたのだけど、その塩梅がちょうどよく、わたしも注文者である18歳も心から満足できた。ほんとうによかった。「全部が最高!」と笑う彼の言葉で、全部の苦労が報われた気がした。

夕方、できたてほやほやのシャツを着た18歳と出かけようとしたときの空があまりにも美しく、夢のような色をしていて、思わず見とれてしまった。まるでご褒美のようだった。
