昨年の終わりごろ、ふと「好きなモチーフを編み込んだわたしだけのセーターが欲しいな」と思いたち、年末だしセールで上等な毛糸が出ているかもしれない、おお!シェットランドウールが出てるじゃないか、色はオレンジっぽい赤にしよう、柄は午年にちなんだやつにしてはどうだろうか、という流れでチャグチャグ馬コ柄のセーターを編むことになった。
チャグチャグ馬コっていうのは、チャグチャグとなる鈴と色とりどりの装束を身にまとった馬たちが練り歩く岩手県の伝統行事で、馬たちへの感謝と無病息災を願うのだそう。実際にこの目で見たことはないんだけれど、岩手の親せき宅に行ったときにチャグチャグ馬コの人形を買ってもらったり、地域に伝わる昔話を読んだりしていたからなのだろうか。馬の柄と考えたとき、チャグチャグ馬コが真っ先に浮かんだ。そうしたらもう、チャグチャグ馬コのセーターしか考えられなくなってしまったというわけ。
早速セール中だった毛糸を購入し、まずは後ろ身頃から編みはじめた。並行して馬コの図案を作成する作業を進める。図案は写真からドット絵を作るサービスを利用して土台となる図を作成し、できたものをスプレッドシートに読み込んで、色や配列を調整したものを編み図と組み合わせた。ついでに、表から編む段には色が変わるごとに右から1,2,3…、裏から編む段には左から1,2,3…と目数を入れてみた。そうすることで、多色で編み込む場合でも必要な目数がわかりやすい。元の図案をスプレッドシート上で作る(といっても編み込み部分だけ)とか、目数を入力する(といってもコピペ)とか、手間といえば手間なんだけれども、逆にそのくらいの手間で自分の好きなセーターを編めるんだったらお安い御用だ。しかも、スプレッドシートで作っておけばスマホやタブレットで確認しながら編めて便利だし、修正もすぐに反映されてとてもよい。こうやって自分で図案を作るのは初めてだったけれど、なんとなくコツがつかめたので、これからはもっと気軽にチャレンジできそうだ。
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わたしは編み物をしているとき、ポッドキャストやドラマなどを聞きながらやることが多い。たとえば最近ならアニメの『ゆるキャン△』、ドラマの『ゆるキャン△』、ドラマの『舟を編む』などを流しながら編んでいる。で、最近見聞きしたなかでやっぱりいいよなー大好きだなーと思ったのが『舟を編む』だった。
好きなセリフはたくさんあるけれど、特にぐっときたのは馬締さんが言った「今、あなたの中に灯っているのは、あなたが言葉にしてくれないと消えてしまう光なんです」というセリフだ。そして、このセリフに連なるように流れ出すのが「僕らの魔法」(ハンバート ハンバート)の”言葉にならないこと、言いたくないこと、それでも言葉にして伝えなければ”のところ。
なんていうんだろうなぁ、なんでもかんでも言葉にするのがいいとはまったく思わないのだけれども、自分のためあるいは大切な誰かのために、なんとしてでも伝えたい、伝えなければならないってことは確かにあるんだよなぁ。そして、そういうときこそ、言葉にするのを躊躇いたいなとも思うのだ。「〜したい」「〜しなければ」の力って自分が想像しているより強めなので、あまり身を任せすぎないように。どちらか一方にぐんと振り切れないよう、勢いよく走り出しそうなわたしAを反対側からよいしょよいしょとひっぱるわたしBのことも大事にしよう。そうして、今できる最善を尽くしつづけよう。そんなことを考えながら、今日もひと目ひと目編み進めている。
