9月1日に誕生日を迎え、47歳になった。節目というわけでもないし、月初の月曜日でみんな忙しいだろうし、週末にでも祝ってもらおうと思っていたら、夫が休みをとったと言う。うれしい。が、そういうのはもっと早く教えてほしい!そう言いたくなるのをぐっとこらえ、大慌てでわたしも休みをとった。聞けば、子どもたちもそれぞれの予定をなんとなくあけていたと言う。それならば…ということで、みんなで出かけることになった。
どこか行きたいところはある?と聞かれたとき、パッと浮かんだのは調布にある神代植物公園だった。大好きなドラマ『À Table!』のシーズン2に出てきて以来、いつか行ってみたい場所として心にとめていたのだ。ただ、問題はこの暑さ。さすがにもう少し涼しくなってからがいいよねと話していたとき、脳裏に浮かんだのがトレジャーファクトリー調布国領店だった。
トレジャーファクトリー、通称トレファクはいわゆるリユースショップで、セレクトされたものを並べている古着屋とは違う。でも、店によっては年代の古いヴィンテージや、状態のよいアメカジやユーロの古着を豊富に取り揃えているところがあって、掘り出す楽しさを求めて家人たちもよく利用している。
なかでも、調布国領店はわたしたち家族にとっては超有名店で、特に18歳にとっては聖地のような憧れの場所。なぜならば、大好きなジョニ男さんが動画で訪れていたお店だからだ。神代植物公園は難しくても、調布国領店に行くのはありかもしれない。そして、せっかく調布まで行くなら気になっていた鬼太郎茶屋にも寄ろう。時間があれば、帰りにあれこれ寄り道するのもいい。というわけで、ドライブがてら調布へ行くことになった。
高速は心配したほど混んでいなくて、思っていたより早く到着した。調布駅前の通りは平日にしては車も人も多かったけれど、背の高い街路樹のせいだろうか、伸びやかな空気と気持ちよい光で満ちているように感じた。トレファク調布国領店はその通り沿いにある。駐車場に入っていくと、ジョニ男さんが買い物後必ずドクターペッパーを買って飲むという自販機が見えた。後部座席の18歳のテンションがぐわんと上がって、みんなで大笑い。それからたっぷり2時間半(!)ほど店内を見て回ったのだけれど、とにかくこのお店は2階がすごい。特にヴィンテージコーナーがすごくよかった。メンズたちが好きなメーカーの服がどんどん見つかるし、パラブーツやオールデンのタッセルローファーなんかもあって、古着をあまり買わないわたしも見ているだけで楽しい時間だった。機会があればまた来たい。
トレファクを後にしたわたしたちは駅前へ移動して、天神通り商店街にある鬼太郎茶屋へ。お店の前には、想像より大きめの鬼太郎とねずみ男とタヌキがいた。かわいい…。今度はわたしのテンションがぐわんと上がる。店内はそれほど広くはないけれど、落ち着いた雰囲気ですごくいい。ピンバッジや文房具、手ぬぐい、キーホルダーなど、全部がかわいくて、あれもこれもと手を伸ばしそうになるのをぐっとこらえながら、ほんとうに欲しいものを厳選した。迷った末にわたしはポストカード全種、夫はやはりポストカードを数枚とクリアファイル2枚、手ぬぐいを購入。クリアファイルと手ぬぐいはわたしへのプレゼントだそうだ。身を切るような思い(おおげさ)で諦めたものたちだったので、とてもうれしい。大事に使おうと思う。

帰り道、高速にのってすぐ夫が「あっ、やばいかも」と言い出した。何事かと思ったら、なんとガソリンがあと1メモリになっちゃったということだった。2メモリあったから大丈夫かなと思っていたけれど、すぐに1になってしまったと。そのときはまだ「いやー大丈夫でしょ、やばそうだったら次のインターで降りよう」と呑気にかまえていたわたしたち。けれど、降りようかといっていたインターで「降りない」を選択した直後、いつもよりかなり早いタイミングでエンプティマークがついた。なんてこったい。次のインターまでの距離は…「えっ!意外と遠くない?」「しかも山の中じゃない?」「これ…もつ?」このあたりから、我関せずだった子どもたちもにわかにざわざわしはじめた。外の気温は33℃。万が一ガソリンが切れてしまったらこの炎天下で助けを待つことになる…。だんだん、みんなの口数が減っていく。インターまであと3キロ、2キロ、1キロ…なんとか高速を降りてホッとしたのもつかの間、一番近いガソリンスタンドまで3.3キロという数字を見たわたしたちは、再び不安に包まれた。「エアコン切る?」「一応、切ろうか」「大丈夫かな」「誕生日が地獄になりませんように!」みな口々に願いながら山道を進む。そして、ようやく交差点の向こうに出光マークが見えたとき、車内の空気は一気にゆるみ、「よかったあ!」「あっぶな!」「助かった〜!」「だめかと思った!」と歓声でいっぱいに。なんというか、日常生活ではあまり体験できない一体感や高揚感がそこにはあって、思わずハイタッチをしそうなくらいの盛り上がりぶりだった。最悪の事態を回避できた喜びと、だからこそ振り返ることができるさっきまでのスリルについて、あのとき実はこう思っていた、いやほんとうにやばいと思ってシミュレーションしてたなどと語り合い、大笑いしながら帰路についた。
ギリギリのところでハッピーを保った誕生日。きっとこれから先、9月1日を迎えるたびに思い出しては大笑いするだろうなと思う。
