わたしは普段、無音のなかにいることが多い。仕事をするときも、裁縫をするときも、ごはんを食べたり、本を読んだりするときも、だいたいそう。四六時中なにかしらの音楽を聴いている、あるいは流している夫とは正反対の生活だ。でも、決して音楽が嫌いなわけではない。むしろ好きなほうだと思う。音楽を聴くのは音楽を聴くときで、それ以外のことをするときは音楽を聴くときではないというだけ。今日みたいな日は、青葉に降る雨の音だけで十分にぎやかに感じる。
と言っても、それはひとりでいるときの話で、誰かといっしょにいるときは相手がしたいようにしてもらっている。そういうとき、わたしにとって最も重要なのは音楽が流れているかどうかではなく、誰とどう過ごすかのほうだから。もちろん、ややこしい話をしなくちゃいけないときは遠慮してもらうけれど、そうでなければ何が流れていても構わない。
夫といっしょにいるときは彼のプレイリストから、気分や季節に合わせたさまざまな音楽が流れてくる。好きな曲があったらすぐに「これいいね」と伝える。そうすると、誰のなんという曲か教えてくれるんだけど、どういうわけかそのほとんどがベン・フォールズ・ファイブ(またはベン・フォールズ)なんだよね。あれだけたくさんの曲が入っているのに、なぜかいつもベン・フォールズ。笑っちゃうくらいベン・フォールズ。あとは、ベル・アンド・セバスチャンとザ・レモン・ツイッグス。たいていその3組のどれかなんだけど、自分で選んで聴いているわけじゃないから、いつまでたっても曲とアーティストが結びつかない。まあでも、いつも新鮮な気持ちで出会い、いいなぁと思えているんだから、それはそれでいいのかもしれない。
