春の光ってどうしてこんなに美しいんだろう。木々の緑や雨のしずく、色とりどりの花たちを輝かせ、その影までもがきらめいて見える。仕事のあいまに庭を眺めていると、あまりの美しさに言葉を失う。ずっとこの風景を見ていたい、ずっとこの季節が続けばいいのに。いつもそう思うけれど、季節は変わっていくし、ずっと同じままではいられない。だからこそ、今、この瞬間を思いっきり目と心に焼きつけなくちゃと思う。忘れないように、消えないように。大きく、胸いっぱいに息を吸う。
むかしは春という季節をそんなに好きじゃなかった。どちらかというと苦手だったと思う。だけど、その「好きじゃない」「苦手」をもう少し詳しく掘り下げてみてみると、わたしが苦手だったのは、新しいクラスとか、新しい人間関係とか、新しい生活のほうで、春そのものではなかったことに気づく。わたしは春が苦手じゃないし、嫌いでもない。そのことは、わたしをほんの少し軽やかにする。
苦手なものがあってもいい。嫌いなものがあってあたりまえ。わたしはそういうものをたくさん抱えて生きているので、心からそう思う。でも、理由がよくわからないまま苦手がったり、嫌ったりしていると、知らず知らずのうちに重くなっていく気がするのだ。心も、体も。どうして苦手なのか、何が嫌いなのか、少し近づいて観察したり、整理したり、調べたりしてみると、思わぬ対処法が見つかることもある。もちろん、なるほどやっぱり大嫌いだわとなることもある。けれども、なんとなく嫌っているときとは重さが違うんだよな。わたしにとって、その差はとても大きい。
4月の夜はまだ少し肌寒いねとあいみょんも歌っているように、このあたりは日が暮れるとぐいぐい気温が下がる。あたたかいカーペットの上でぺたんこになって眠るハルちゃんが、すこやかな寝息をたてている。
